COVID-19パンデミック大規模災害による

個人や組織への影響を最小にする

長期にわたり繰り返し起こるCOVID-19パンデミックは、人々の健康、生活、生命、尊厳を脅かし、国家の根幹を揺るがす事態となり、未だ収束の見通しは立っていません。このような大規模災害では、誰もが被災者で組織内も混乱したり、リーダーシップが低下したりします。早めに外部からのサポートを受けることが、個人にとっても組織にとっても早い回復に繋がります。

 
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​看護職者は惨事ストレスを受けやすい職業

長引くCOVID-19パンデミックは大規模災害です。看護職者は様々なレベルで惨事ストレスを受けやすい職業だと言われています。惨事ストレスとは、「通常の対処行動機制がうまく働かないような問題や脅威(惨事)に直面した人か、惨事の様子を見聞きした人に生じるストレス反応」(ミッチェル・エヴァリー,2002)と定義されています。

 
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心的外傷後ストレス反応(PTSR)にいち早く気づき、PTSDを予防する

惨事を目撃した人に表れやすい典型的な反応として心的外傷後ストレス反応(PTSR)があります。適切に対処すると人間が本来持っているレジリエンス(心理的回復力)で自然に回復することが多いのですが、気づかずに無理をして仕事や学業などを続けると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に発展することがあります。早めに気づいて対処するためにも、PTSRの症状を理解しておきましょう。

 
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​COVID-19 大規模災害下の倫理の対立を調和へ

基礎教育の段階から私たち看護職者は患者中心のケアの倫理で育っています。しかし、COVID-19大規模災害下では公衆衛生の倫理が優先されざるを得ず、倫理的なジレンマが生じやすくなっています。私たち看護師は、プロフェッショナルとして、この倫理の対立を調和に導く方法を見出す必要があります。

 
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看護職者に生じやすい道徳的傷つき(Moral Injury)

日本ではまだあまり注目されていないメンタルヘルスの概念として、Moral Injuryという状態があります。元々は戦争に従事する軍人に起こりやすい心理的な反応として研究が蓄積されてきました。しかし、近年、医療や福祉の現場で働くヘルスケアワーカーと言われる人たちにもこのMoral Injuryの状態があることが研究でわかってきました。

 今回の大規模災害のように、相対的に人的・物質的(特に医療に関わる資源)資源が不足する事態になると、この状態が生じやすくなります。また、組織からのサポート認知が低いとMoral Injury の状態は起こりやすいともいわれています。そしてMoral InjuryはPTSDをはじめとする様々なメンタルヘルス不調と強い関連があることが研究で分かっています。更に、ヘルスケアワーカーへのCOVID-19大規模災害によるMoral Injuryは戦闘に従事する兵士以上と言われていることから注意が必要です。

例えば、人工呼吸器がそれを必要とする患者さんの数に対して不足する場合は、誰に優先的につけるかを判断するトリアージが必要です。一旦人工呼吸器をつけた場合でも、より装着が優先される人が入院してくると、最初に装着していた患者さんの人工呼吸器を外して、より優先度の高い人に付け替えるということが現実に起こっています。

日本ではまだ、国としてのトリアージの指針が示されていないため、判断は全て現場の医療者に委ねられています。このような状況では、最前線でCOVID-19に罹患した患者さんに直接的にケアを提供している看護職者はMoral Injuryの状態になりやすくなります。中でもCOVID-19で亡くなった患者をケアした経験がある人はMoral Injuryやメンタルヘルスの問題を抱えやすいと言われています。

Moral Injuryは自分が道徳に反する行為を行ったというだけでなく、他人や所属組織が行った場合にも生じます。次の図はそれを示したものです。

 
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​道徳的レジリエンスを高め、道徳的傷つきを予防する

COVID-19大規模災害下での看護職者のMoral Injuryは、戦場で戦う兵士以上と言われています。
しかし、道徳的傷つきに対抗する概念として、道徳的レジリエンスがあり、それを高めていくことが、予防につながると考えられています。

 
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燃え尽き症候群、離職や休職を予防する

ヘルスケアワーカーの中で最もリスクが高いのは看護学生、その次に看護職者です。とりわけ、若いこと、女性であること、COVID-19で亡くなった患者をケアしたことがあること、精神疾患の既往、燃え尽き症候群の既往があることは、心身の不調が再発・持続しやすい(Peccoralo,et al.,2022)と言われています。危機が遷延すると最も危惧されるのは、今まで元気で働いてきた人の燃え尽き症候群が増えて、離職や休職に追い込まれていくリスクがあることです。
元々看護職者は燃え尽き症候群が多い職種です。特に、仕事の負荷が高く、チームから切り離された状態で多くは一人でケアする訪問看護師は中でもリスクの高い集団です。燃え尽き症候群の主要な症状は、情緒的な消耗感と脱人格化(人間として当たり前の感情が持てない)です。燃え尽き症候群に陥ると、他者への思いやりの感情が持てなくなるため、ケアの質の低下に直結します。特に、高い理想を持っている人たちのほうがリスクが高いことも分かっています。
 燃え尽き症候群の予防的な支援については、セルフケアに役立つ情報に記載していますので、是非ご覧ください。

 

大規模災害時に外部からのサポートを活用
する意義

自然災害時には外部からのサポートを受けるのは当たり前です。しかし、今回のCOVID-19パンデミックは、日本ではまだまだ大規模災害という認識が低く、外部からのサポートを受けることに躊躇や抵抗があるようです
今回のCOVID-19パンデミック大規模災害下では、感染防御体制の構築、コロナ専用病床の創出等、大規模な組織の再編成を余儀なくされています。そのような中では、管理者や看護管理者のストレスは非常に大きく、疲弊した状態なっている組織もあるようです。また普段ならお互いにサポートし合えていた同僚同士も、お互いに余裕がなかったり、ソーシャルディスタンスでコミュニケーションの機会が減っていることから、なかなか相互のサポートが難しい状況になっています。
この大災害の影響は長期に亘ることが危惧されています。個人と組織のレジリエンスを高め、心身の不調や組織の分裂を予防する方向で、外部からのサポートを受けることを推奨したいと思います。
私達は各種のサポートプログラムをWAM助成の資金提供により、無償で提供します。お気軽にお申込みください。

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​セルフケアの重要性:

レジリエンスを高めて危機に立ち向かう

長引くCOVID-19による個人や組織への影響は非常に大きく、手をこまねいていれば破局的になる懸念があります。しかし個人にも組織にも元々レジリエンス(復元力)が備わっているため、外部資源を活用して適切に対処すれば、コロナ以前に増して、個人も組織も強靭になり次の災害にも備えやすくなります。

WAM助成事業で提供しているサポートプログラムは、医療機関への紹介以外は、起こったことへの対処という意味と同時に次の災害に備える予防戦略でもあります。

特に今回の大規模災害では、Moral Injuryの予防が鍵となると考えられます。それは前述したようにMoral InjuryはPTSDをはじめとする様々なメンタルヘルス不調との関連が強いことが研究で分かっているからです。

また、COVID-19大規模災害はいつ終わるとも予測がつかない不確実性の中で絶えず変化への対応を求められているため、長引けば長引くほど燃え尽き症候群に陥るリスクが高まります。燃え尽き症候群はケアの質が低下するだけではなく、離職や休職に繋がりやすいことから、更にマンパワーの不足に繋がることになります。

​​そこで重要なのがセルフケアです。今ここでの危機と次の危機に備えて、レジリエンスを高めましょう!

 
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先ずはご相談ください

COVID-19大規模災害で疲弊した看護職者への総合的支援事業では、あなたやあなたが所属する施設に最も適したレジリエンスを高めるオーダーメイドな支援を提供します。相談支援(あなた自身や職員のメンタルヘルス、管理に関することなど)、セルフケアに基づく心理教育、リカバリーカレッジなどで多岐にわたるニーズに応えます。次のボタンから、もしくはチャットでお申込みください。

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